回復期病棟の主任として働いていた頃の悩み

回復期病棟で主任をしていた頃、私は日々の看護業務に加えて「調整役」としての役割を担っていました。やりがいは大きかったものの、その分ストレスや責任も重く、常に板挟みの状態に立たされていました。
スタッフの不満をやわらげる日々
スタッフからは「業務が多すぎる」「もっと楽にしてほしい」といった不満が絶えず寄せられました。
主任としてはスタッフの声に耳を傾けながら、現場が回るように工夫しなければなりません。
時には自分自身もしんどい状況の中で、誰にも弱音を吐けない孤独感を感じることがありました。
夜勤帯で連日不穏になる患者さんについてカンファレンスをした時のことです。
夜勤スタッフから「夜勤業務ができないからもっと鎮静をかけてほしい。」と強く求められ、医師も「夜勤の看護師がそう言うならセレネースを打てばいい」と指示を出しました。
夜勤で不穏な患者さんを少ない人数で対応する、夜勤スタッフが大変なのはわかります。
しかし私は、ただ今の大変さを乗り切るためだけの判断ではなく、「患者さんが回復に向かうために最善かどうか」 を話し合いたかったのです。
しょこその視点をスタッフや医師と共有できない時、主任としての孤独や葛藤を強く感じました。
夜間不穏になる患者さんの対応は、薬剤を使用して入眠を図るだけではないですよね。
なぜこの患者さんは不穏になるのか?
不穏は患者さんそれぞれの理由があるため、考えられる原因に対して多角的なアプローチが必要です。
しかもこれをしたから不穏が解決したという単純なケースはありませんし、短期で解決するのは難しいことを実感しています。
看護する側にもパワーが必要なので、チームアプローチが本当に大切です。
他職種との関わりによる板挟み
回復期病棟は医師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなど多職種が関わります。
チーム医療は患者さんにとって大切ですが、意見がぶつかることも少なくありません。
その際、調整役として間に立つのは主任の役割です。双方の意見を尊重しつつ解決策を見出すのは精神的に大きな負担で、板挟みになる苦しさを日々感じていました。



職種が違うと視点が異なり、衝突することも多いので双方の意見を汲み取るのも大切な役目です。
患者・家族対応の重圧
患者さんやご家族は退院後の生活への不安を抱えているため、説明不足や期待のズレからトラブルになることもありました。
そんな時も矢面に立つのは主任です。医療知識だけでなく、傾聴力や交渉力も求められ、毎日が緊張の連続でした。



患者や家族からのサインを見逃さずに、トラブルになる前に対応することを心がけました。
転職を意識するきっかけになった出来事


主任としての責任や現場での板挟みに悩んでいた頃、私が「このままの働き方を続けてはいけない」と本格的に考えるようになった出来事がありました。
それは、ある冬の大雪の日のことです。
当時、通勤には往復で2時間かかっていましたが、大雪のため車が渋滞でまったく動かず、結局帰宅できたのは夜の21時過ぎでした。
4人の子どもたちは隣人にお願いして無事に過ごせましたが、「もし何かあった時、私はすぐに家に帰れないのだ」という恐怖に押しつぶされそうになりました。
その瞬間、私は強く思いました。
「仕事を優先するあまり、子どもたちのそばにいられないのは本当にいいことなのか」と。
病棟でのやりがいや責任感も大切ですが、母親として「子どもを守れる距離にいること」も同じくらい大切です。
この出来事をきっかけに、私は今の働き方を見直し、転職を真剣に考えるようになりました。
デイサービスに転職して感じたメリット


回復期病棟で主任をしていた頃と比べると、デイサービスに転職してからは働き方が大きく変わりました。
特に感じているメリットをいくつかご紹介します。
パート勤務なので定時に帰れる安心感
病棟勤務の頃は残業や夜勤が当たり前でしたが、デイサービスに転職してからは定時で仕事を終えられるようになりました。
決まった時間に帰宅できることで、家庭や自分の時間を確保できるようになり、生活のリズムも安定しました。
通勤が自転車で5分という快適さ
以前は往復2時間の通勤に苦労していましたが、今は自転車でわずか5分。
通勤のストレスがなくなったことで、体力的にも精神的にも余裕が生まれ、働きやすさを大きく実感しています。
持ち帰り仕事がなく家庭に集中できる
病棟勤務では書類作成や勉強に追われ、帰宅後も仕事を引きずることがありました。
しかしデイサービスでは業務がその場で完結するため、家庭では子どもや家族に集中することができます。



オン・オフの切り替えがはっきりできるようになりました。
土日・祝日が休める
病棟ではシフト制で土日祝日の休みはほとんど取れませんでしたが、デイサービスは基本的にカレンダー通り。
子どもの行事や家族との予定に合わせられるので、家族との時間を大切にできます。
スタッフに対する負い目がない
病棟時代は、まだ仕事が残っているのに自分だけ早く帰ることや、夜勤回数が少ないことに負い目を感じていました。
また子どもの体調不良で休むことに対しても申し訳なさを感じていました。



今は勤務時間に精一杯仕事するだけなので、気持ちが楽になりました。
在宅生活に触れられる新しい学び
デイサービスでは利用者さんが在宅でどのように暮らしているかを知ることができ、病棟勤務では得られなかった視点に触れることができました。
生活に直結する看護の実際を学べることは、看護師としての幅を広げる良い経験になっています。
デイサービス勤務のデメリット


もちろん、デイサービス勤務にもデメリットはあります。
給与面での課題
一番大きな違いは給与です。病棟勤務で主任をしていた頃に比べると、デイサービスのパート勤務はどうしても収入が下がります。
家計において「給与の安定性」を最優先にしたい方にとっては、大きなデメリットになるかもしれません。
医療処置の経験が減る
デイサービスは急性期や回復期の病棟と比べると、医療処置を行う機会は限られています。
利用者さんの健康チェックや服薬管理など大切な役割はありますが、病棟で培った臨床スキルを活かす場面は少なめです。
「看護技術を維持したい」「臨床経験を積みたい」という方にとっては、物足りなさを感じる可能性があります。
転職を考える看護師に伝えたいこと


回復期病棟からデイサービスに転職して強く感じたのは、働き方の「正解」は一つではないということです。
私の場合は、家庭との両立や心身の健康を優先したかったため、収入が下がっても夜勤なし・通勤5分・定時帰宅といった生活を選びました。



その結果、子どもたちとの時間や副業の挑戦など、別の価値を得ることができました。
しかし、人によって優先したいことは異なります。
「できるだけ収入を確保したい」「キャリアアップにつながる職場で働きたい」「夜勤はつらいが臨床経験は続けたい」など、働き方の基準は人それぞれです。
だからこそ、転職を考えるときには感情に流されるのではなく、自分にとって何が一番大切かを冷静に見極めることが重要だと思いました。
私は直接応募でデイサービスに転職しましたが、条件を幅広く比較したい方は転職サイトを活用するのも良い方法です。
まとめ


回復期病棟で主任をしていた頃は、責任の重さや板挟みに悩み、家庭との両立も難しい状況でした。
決定的だったのは、大雪の日に帰宅できず、子どもを守れないかもしれないと転職を真剣に考え、最終的にデイサービスで勤務しました。
デイサービス勤務は「夜勤なし」「通勤5分」「定時帰宅」「土日祝休み」といった働きやすさを実現し、家庭や副業に時間を使えています。
その一方で、収入が下がったり、臨床スキルを発揮する場面が減るというデメリットもあります。
この経験から学んだのは、転職には絶対の正解はなく、自分にとって何を優先するかで選ぶべき道が変わるということでした。
私にとっての正解は「家庭との両立を優先できる働き方」でしたが、これはあくまで私自身の選択です。
皆さんも、自分に合った働き方を見つけるために、焦らず情報収集をしながら選択していってくださいね。










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